おまけ編 -春爛漫1.5-
「秘密を知るのが私一人なら、いざという時の責を全て負う覚悟が私にはありました。けれど、他の隊士に知られたのなら、その人間がどれだけ秘密を守ると言っていてもいつ綻びが出るか分かりません」
「そんな!だって彼は秘密は守るって言ってくれました!」
「けれど、秘密は守ると言っても、貴方を既に武士として見てくれていないでしょう!それでこれからも隊で同志として続けていけると思いますか?」
「出来ます!」
「今度は『秘密を守るからその代わりにその身を好きにさせろ』と言って来るかも知れませんよ」
「酷い!彼はそんな人ではありません!先生もよくご存知のはずじゃないですか!」
「…分かってますよ。言い過ぎました。…けれど、先日の件を見て心配になってしまったんです。私だけならいい。けれど、今後どんな形で貴方の秘密を知る人数が増えるとも限りません…。もう潮時ではありませんか?」
「嫌です!もしそんな日が来て、私の秘密が全て明らかにされても、沖田先生は何も知らないと仰ってくださればそれでいいんです!」
「そんな訳にはいきませんよ…。貴方ねぇ…私を軽く見すぎですよ」
「そんなつもりは!」
「もう二年以上ずっと一緒にいるんですよ。そんな簡単に貴方を切り捨てられる訳無いじゃないですか…」
「そんな!…これ以上ここにいたら沖田先生にもご迷惑が…」
「--」
「私の覚悟が甘かったんですね…だから知られてしまった…」
「…貴方は十分に武士として勤めを果たしてくれました」
「切腹します!ここに入った頃にはその覚悟が出来ていたのに!申し訳ありません!一人くらいなら知られても秘密を守ってくれるなら大丈夫だろうといつの間にか自分を甘やかしていました!先生、どうか介錯をお願いします!」
「嫌ですよ」
「!…そうですよね…これまでも沖田先生に私の我侭につき合わせてきて…その後始末までお手を煩わせる事は出来ませんよね…」
「貴方が切腹しても女子が新選組にいたという事実は結局明るみに出るんですよ。土方さんや近藤先生を私が貴方が死んだ時まで欺き続けられるはず無いじゃないですか」
「!」
「ねぇ」
「…私が浅はかでした…」
「それにね…もう私は貴方を失うなんて出来ない…」
「それは!私たちは武士です!いつ死ぬか分からない身ですから沖田先生に覚悟が無いはずがないじゃないですか!」
「私を買い被りすぎですよ」
「そんな事ありません!私は誰よりも沖田先生を尊敬して、信じていますから」
「私を思うなら切腹を考えないでください」
「それは…でも…これまで皆を欺き続けたのに…今更別の場所で生きてなんていけません」
「私の傍から離れないでください」
「だって、でも、逃亡しても、切腹しても結局は沖田先生にご迷惑を掛けてしまうなら、私はどうすればいいんですか!」
「私も覚悟を決めました。神谷さんも覚悟を決めてください」
「何の?」
「私のお嫁さんになってください」
「はぁ?」
「私に任せてくれれば、全て上手くいきますから。安心してください」
「へ?」
「だから私と夫婦になりましょう」
「はぁ…」
そうして、春爛漫1の最後に繋がる。