■想う、時・51■
「何だ…今のは…」
近藤の口から自然とそんな言葉が零れ落ちる。
過去世では日常的な光景ではあったが、今世に生まれて初めて殺し合いを見た。その衝撃は、自分たちでも驚くほど計り知れなかった。
こんなにも緊張感が走る日常を過ごしていただろうか。
遠い昔を思えばそうだったのかもしれない。
いや。しかし衝撃はそれだけではなかった。
あの頃と全く違う命の駆け引きを、近藤は始めて目の当たりにしたのだ。
あの時代は日々どんなに命の駆け引きをしていても、武士としての矜持や、作法、そういった、侍が持つ暗黙の掟のようなものを皆備えて戦いに望んでいた。
生きても死しても、命を賭すその意味を全ての者が確固として抱き、全ての終わりには敵であれ味方であれ、その尊厳を尊重した。
しかし目の前の戦いは違う。
そんなものを全て無視した、どんな卑怯な手を使っても構わない、本当にただの殺し合い。
生きるか死ぬか、その二択。
嫌悪感と拒否感が胸を突く。
こんなのは武士としての戦いではない。
しかし一方で、突きつけられた。
それが、あの幕末を生き抜いた、明治を生きた者たちが生きる為の戦いだった事を。
セイは必死に侘びていたが、昨日見せた必殺の剣。
しかしそれ以上に秘めていた彼女の力を今まざまざと見せ付けられた。
その体裁き、剣術、武術。その全てが最早、武士ではない。
殺人のプロフェッショナル。
セイの動きはとても美しく、まるで羽根のように舞っているだけのように見えた。
しかし、彼女の一撃で、斎藤は倒れ込み、身動き一つしなくなった。
事も無げに人を死に至らしめるその動き。
彼女自身眉一つ動かすことなく、息一つ乱すことなく動作一つで全てを終わらせた。
――彼女はそうでもしなければ生き延びていけなかった。こんな戦いをしながら生き延びたのだ。
そうは分かっていても、ゾクリと背筋が寒くなるのを感じる。
近藤の中の『神谷清三郎』のイメージが悉く壊れていく。
いつでもひたむきで、誰よりも武士であろうとして、けれど日向のように眩しい強さと、どんな困難にも負けないしなやかさを持っている。そんな青年。
過去の少女は、本当の性を偽ってたとはいえ、確かに武士だった。本当に今の少女と同一人物だっただろうか。
総司がそうだと言うし、どう見てもセイにしか見えないのだが、それでも近藤は彼女に恐れを抱いた。
隣の総司を見ると、彼の表情を読み取る事は出来なかった。
――まだ、総司は、セイを愛しいと思うだろうか。
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■想う、時・52■
斎藤とセイの動きが止まり、斎藤が倒れたと同時に土方は動いた。
今のは確かに殺し合いだった。その戦いに決着が着いたという事は、即ち――どちらかの絶命を意味する。
そう悟った彼は無我夢中で駆け寄り、二人の傍に駆け寄った。
「斎藤は!?生きてるのか!?」
必死の形相の土方に、セイは何処か悟った表情を見せ、それから苦笑すると、覆い被さってきた斎藤を横に寝せた。
「大丈夫です。急所ははずしましたから…」
「…本当か?」
冷静に答えるセイに信じられない様子で土方は恐る恐る彼女を見る。
「殺しません」
「あの状況で……そんな加減もできるのか?」
かすれた声で問う土方に、セイは暫し沈黙し、そして、「はい」と答えた。
「斎藤先生…?私疑われてるんですけど。起きてください」
そう言うと倒れた斎藤の鳩尾に掌を乗せ、ぐっと力を入れる。
「がはっ!……神谷。心臓を逸らしたのはいいが、それでも痛いものは変わらないと思うぞ」
飛び上がるように上半身を上げた斎藤は己の鳩尾を撫でながら、セイを見る。
「………悪かった」
そう小さく呟くと、斎藤はセイの髪に触れ、そっと撫でる。彼女の温もりを確かめるように、何度も撫で、そして頬に手を下ろしていく。
「あの頃と変わらず、綺麗なままだな。…最後の時と変わらず…」
その言葉にセイは、はっと顔を上げる。
「もしかして…斎藤先生……」
「お前の亡骸を葬ったのは俺だ。……随分探したんだぞ。何も言わず突然いなくなって…俺はそんなに頼りなかったか?」
寂し気な眼差しで問う斎藤に、セイは何度も首を横に振る。
「あんたも沖田さんもどう思うか分からなかったが、一番いいと思う場所に埋めたんだ……沖田さんの墓にな…」
「っ!でも!」
「…沖田さんの家族にちゃんと了承を貰ってある。誰もが神谷に感謝をして、そして沖田さんも喜ぶからと言っていた」
セイの不安を払拭するように斎藤はそう告げる。
「……良かったな。また会えて」
そう言うと、斎藤はセイを見つめる。しかし、セイは少し笑みを見せた後、すぐに目を伏せ、首を横に小さく振った。
「俺のせいだな…」
顔を上げ斎藤は固まったまま身動きの取れない近藤と、同じ様に無表情のままこちらを見据える総司を見やり、そしてセイに静かに呟いた。
己の感情を晴らしたいばかりに斎藤はセイに仕掛けた自分を先程一度謝罪したが、改めて反省した。
きっと彼女は彼らのこんな表情を見たくなくて己の力を黙っていたのだろう。そう気付いたからだ。
「…隠していた訳ではないんです。ただ…知ったら傷つけるだろうな…と思っていたので…」
剣術の腕だけ、あの頃よりも格段に上がったのだ。そう思われるだけなら良かった。
武士としての誠を貫く事は出来なかったが。
生き延びる為の剣術に長けている。
生き延びる為の格闘術に長けている。
それならまだいい。
セイは。
恐らくこの場にいる誰よりも『人を殺す』事に長けている。
そう思われるのは――辛かった。
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■想う、時・53■
総司は今のを見てどう思うだろうか。
それが、自分の最も怖れている事だと気付いたセイは、恐々と総司の顔を見上げた。
彼は無表情でこちらを見据え、そして、ゆっくりと歩き出すと、セイに手を伸ばす。
びくり、と思わずセイは怯えて体を震わせるが、それを厭わず総司は彼女を立ち上がらせると、彼女の目を覗き込む。
「……何て顔してるんですか」
「…っ」
涙が零れる寸前。それを必死で堪えるようにくしゃりと顔を歪めているセイに、総司は苦笑した。
「昨日も言ったじゃないですか。生きてくれてありがとう。って」
「でもっ!」
「そうですねぇ。それじゃ、もう一度私と手合わせしてください」
「え!?」
「今度は刀だけじゃありません。貴女自身の実力でお相手してください。でないと、私が貴女を殺してしまいますので」
総司はにっこりと笑う。
「…と、いう事で、お二人ともそこ邪魔ですので横に避けて頂けますか?」
座り込みながら二人のやり取りを見ていた土方と斎藤は振り返った総司の笑顔に背筋の寒さを感じる。
総司を怒らせた。
しかも。かなり根深く。
しかし、今この場で反論する事も出来ず、彼が何をしたいのかも分からない土方と斎藤はその場を離れ、一連の流れについていけない近藤の横に立った。
「総司がやるのか!?殺されるぞ!」
思わず出た言葉に、近藤は自分自身でも驚いて思わず口を片手で塞ぐ。
そうか。
これが嫌だったのか。セイは。
と、土方は初めて気が付いた。隣の斎藤を見れば、彼は俯いている。
前世で共に生きていたとは言え、記憶を持ってまた再会したとは言え、その間の空白の期間は長い。そして、幕末という乱世、その業は深い。
それを簡単に埋める事はできないのだ。
総司には決して言えないが、予めセイがどのように生きていたのか聞いていた土方でさえ、昨日の剣術だけでも驚かされたのに、今の戦いを見れば寒気さえ感じた。
きっと近藤の衝撃は途方も無いだろう。
彼女自身をよく知っているはずなのに、前世の最後の記憶とかけ離れた姿を見せられれば、まだ出会って一日もいない今の彼女しか知らなければ――恐ろしいと思っても仕方ないのかもしれない。
総司は?
土方は、彼の感情が知りたくて、対峙するセイと総司を見据える。
そうか。
だから総司は怒っているのだ――。
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■想う、時・54■
対峙したまま、二人はピタリと時が止まったように動かなかった。
それは互いに、互いの隙を探していたから。
――一瞬でも気を抜けば相手に殺されてしまう。
けれど、それは本当は違うのだ。
恐らく彼女は。
総司の思考はそこまでで途切れた。
動き出したのはセイだった。
空を走る一筋の刃。
それは的確に総司の胴を狙い、急所を突く。
しかし、それは一撃とはならずに、風だけが起こり、セイの目前に彼女の視界を奪おうとする。
咄嗟に掴んだ総司の道着を軸に彼の体を一周し、彼の背に回る。勢いに任せたまま彼の脇の急所を拳が狙った。
「っ!」
「!」
セイの一撃で決着は着くはずだった。
しかし、彼女の視界は突然襟首を引かれる事で天井に変わり、床に叩きつけられる。
彼女の細い喉元を砕く為に剣先が真っ直ぐに降りてきた。
――。
「――っはぁ。引き分けですね」
総司の首には巻きつけられたセイの膝が彼の頚椎を狙っており、セイの首元には竹刀の先が喉仏を狙っていた。
セイは驚いたように総司を見上げていた。
「あのねぇ。神谷さん。貴女が常に無敵な訳ではないんですよ。私は武士のままで死にましたから武士道としての刀と、現代に生まれ変わってから鍛錬してきた剣道しか知りません。けどね、それでも貴女を殺せる人もいるんです」
「……っ」
また泣きそうな表情を浮かべるセイに、総司はまずそっと彼女の足を己から下ろして、捲れ上がっていた裾を降ろしてやる。
仰向けに倒れていたセイは彼にされるがままに任せて、ただ彼を見つめていた。
「いつの間に左利きで刀を握れるようになったか不思議そうな顔ですね」
彼女の喉元に突きつけていた竹刀をセイは一度交わしており、その軌道を考えれば彼女が総司に捕らえられるはずがなかった。それが出来たのは一瞬の内に手の中の竹刀を右から左に握り替えたから。軌道を反転させたのだ。
「…」
「私だってね…あの頃、貴女が私を守りたいと思ってくれていたように、私だって貴女を守りたいと思って身につけた力があったんですよ……前の生では見せる事は結局見せる事はなかったですけどね…」
少し寂しそうに呟いて総司は竹刀を握ったままの己の左手を見つめ、そして顔を上げると、もう一度セイを見つめた。
「貴女の力は……人を生かす為の力ですね。人を殺めない為の力。そうやって努力してきたのでしょう?」
「っ!」
どうして彼は見抜くのだろう。
セイの口から嗚咽が漏れる。
「人を殺める事を望まないから、人を殺める力を手に入れる。貴女は精一杯生きる事を決めた。どうやってだって生き延びていこうと思ったんでしょう。ただ、どんな相手が現れても、決して殺める事で生き延びる事を出来る限り少なくて済むように、貴女は殺める力を超えて殺さない為の力を身につけた」
ふわりと、総司の大きな掌がセイの前髪を撫でる。
「やっぱり神谷さんは神谷さんだ」
嬉しそうに笑う総司が、セイには眩しくて仕方が無かった。
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■想う、時・55■
総司たちの目の前では朝練に集い始めた門下生たちが各々着替え、防具や竹刀の準備、簡単な体操を始めている。
セイと総司の試合が終わった後、総司たちは既に門下生の朝練の時間まで間もない事に気が付き、慌てて母屋へ戻り、用意されていた朝食をかき込んだ後すぐに道場へ戻った。
「何故俺まで」と、呟く斎藤は総司に腕を引かれ共に道場へ戻り、セイはそんな彼らを見て戸惑っていたが、近藤に「一緒に朝稽古もしないか」と誘われると、やはり「私は門下生では無いので残念ですが…」と丁重に断りを入れていた。
だったら自分もと総司から逃れようとする斎藤に、「私と斎藤さんが打ち合っているのを偶に見ている門下生たちから一度、斎藤さんにも指導して欲しいとずっと言われていたんです。折角の機会なので是非今日はお願いしますね」と、何処と無く不穏な空気を放ちながら笑顔で求める総司に、いつもなら強気に断るのだが、今日だけはそれは出来なかった。
その理由は、もう既に斎藤自身も自覚していた。
準備体操を見ているようで何処か遠くを見つめるように斎藤は眼差しを道場内に向けたまま、隣で同じ様に立つ、総司に小さく呟く。
「怒っているか?」
「怒らないはずないですよ」
分かっていたはずの総司の返答だが、肯定はされたくなかった、否定して欲しかったと何処か心の奥で期待していた斎藤は、不快感を押し殺した声質の答えに胸に痛みを感じた。
「…そうさな…神谷は望んでいなかったのに、無理やり隠していた実力を出させたんだからな」
自嘲するように呟く斎藤に、総司は透かさず無表情に答える。
「違いますよ」
「違うのか?」
返答は予測していた通りだったのに、その怒りの方向が違っていた事に斎藤は片眉を上げた。
「神谷さんを利用して自分の想いを昇華させようとした事に私は怒ってるんです。土方さんもそうです」
その言葉は、予測していた感情以上に痛烈で、それでいて、自覚したくなかった無意識の中の己の弱さを他人に露呈された指摘に、斎藤は胸を鋭利な刃物で抉られたような感覚を味わう。
否定はしない。しかし、目を逸らし、肯定したくない感情である事は確かで、素直に謝罪をする事がどうしても出来なかった。
「分からない感情ではないんです。今まで誰にも話したくても話せなかった、過去の記憶や感情を共有できる人がいなかった、そこに、やっと共有できる人が現れたんですから。今でも抱える己の痛みや苦しみを共有したい、共有する事で己の苦痛を減らしたい。そう思うものでしょう?」
斎藤は総司の的確な指摘に、目を見開いて彼を見返した。
彼には分かるはずもないと思っていた。
皆それぞれ過去の記憶を持ち、それぞれにあの時代を生き抜いた。様々な感情や想いや経験を抱き生まれ変わっている。
けれど、斎藤と今世で再会し、すぐさまセイの話を持ち出し、彼女を求め、何かの際に彼女の話をする総司には、過去から持ち越した記憶や感情からくる痛みや苦痛は理解できないものだと思っていた。それは、記憶を持って再会してきた人間の中で比較的早く亡くなった総司に対する最も長く生きた人間の傲慢かもしれない。
しかし、いつだってセイに向ける感情以外は総司の中に過去の記憶に対する蟠りが見える事は無く、セイに対する感情も純粋に彼女の過去を全て知りたい、そこから今を生きる彼女の可能性の糸を手繰り寄せたいというものであって、異常なまでの執着は感じても、そこに暗い感情を感じる事は無かった。
ある意味尊敬できると思えるほどの能天気な男だと思ったくらいだ。
だから、斎藤の中にある、土方の中にも見え隠れしてる感情を的確に見抜いて、理解しているとは思っていなかった斎藤は驚いていた。
己を見つめる斎藤の視線を受け止めながら、総司は淡々と言葉を続ける。
「理解は出来ますよ。けれど、感情も録に整理できてないまま神谷さんにぶつけて、尚且つそれを全部神谷さんに救ってもらおうだなんて。甘えにも程があります」
分かっている。
いや、刀を交えている途中から気付いた。
だからこそ、セイに侘びたのだ。
そう返したいのに、返せず、斎藤はぎりと唇を噛み締める。
アンタに俺の感情の何が分かる。
そう、言葉に出そうになって、そんな自分を恥じた。
それこそ傲慢で暴力的で自己愛に満ち溢れた言葉以外の何ものでもなかったからだ。
気付いていて、まだ己自身に泥を塗るのか。と。
どれだけ過去の辛い想いを抱いていたとしても、それを、同じ過去の時間を共有していたとしてもあの時の感情を今に持ち越していていないセイにぶつけるべきではなかったのだ。
それを彼女と刀を交えて気付いた。
彼女の太刀筋は戸惑い、斎藤の想いをどう受け止めてよいのか戸惑っているのがありありと分かった。
少なくとも彼女の中で、――どんな一生でどんな最後であったとしても、既に終わった出来事だったのだ。
その事を痛烈に感じた。しかし、感じたところで己の感情は収まらず、彼女にぶつけ、彼女が望まない形で過去の彼女の一部を露呈させた。
――彼女は明治を生きた彼女の人生を語る事を望んではいなかった。
いつか話そうと思っていたのかも知れないし、話さなくていいと思っていたのかも知れない。彼女が決めた事を斎藤が混ぜっ返してしまった。
今を生きる彼女に対して、印象を変えてしまった。――特に近藤は。
総司は変わらなかったのだろうか。そう思って斎藤の瞳が揺らぐ。
それを察したように、けれど視線は彼に向けず道場を見据えたまま言った。
「斎藤さん。私はね。どんな神谷さんでもあの人だけが特別なんです」
「どんな過去があったとしても?」
そんな事を総司に問う自分に斎藤は自分で自分に呆れた。しかし、それを嘲笑うかのように鼻を鳴らすと、彼は冷静に答える。
「勿論です」
そう答えられて、斎藤は言葉に詰まった。
何故。そこまで。
そして、彼が今ここにいる中で、過去生の記憶を最初に思い出し、最も長い時間それを抱きながら生きてきた人間だった事に気付いた。
恐らくは。
斎藤の葛藤や土方の憤り、そんなものを幾度も抱きながらとっくのとうに乗り越えてきたのであろう。
いつだって二人にセイの記憶を求めていたけれど、決して深入りしようとはしなかった。それは単純にセイ自身と出会った時に彼女自身に直接聞こうと思っていたのかもしれない。
そう思っていった。しかし、彼は自分たちの抱く感情の全てを知った上で配慮していたのではないだろうか。
まさか、この野暮天に気を遣われるなんて。
「過去はね…知りたいですよ。けれど、本当は必要無いんです。手がかりが欲しかっただけで」
「……」
「出会って、改めて気付きました。あの人がどんな風に生きてきたか。どんな風に今を生きているのか…あの人が語るのを望まないのならいらないんです。私も自分の事語るつもりないですからね。あの人が必要無いと言うのなら」
「……」
「神谷さんさえ傍にいてくれればそれでいいんですよ」
ただ。それだけ。
『セイ』その人が傍にいてくれればそれだけでいい。
それだけだったのだ。
だから。
「……土方さんも斎藤さんも大好きですけど、流石に腹立ちますね」
「………すまない」
初めて総司に対して、斎藤は深く侘びた。