5.揺れるのの草、踊る風

まるでそれは風のようでした
舞い上がる風に乗り 草は空へとしなやかにその身を伸ばす
まるでそれは草のようでした

風のように吹き抜け 草のように傍に寄り添っていました

彼はいつも風と共にありました
冷たく吹かれても
優しく吹かれても
総てを己の糧として 大地に根付き 風に折れず 成長し続ける
強く儚い野の草
決して届かない太陽に手を伸ばし
大地と空の相反する存在でありながら 憧れる
その身打ち砕かれても 何処までも何処までも果てしなく
風に乗り 宙を舞う
風に揺られ その姿を変化させ やがて
魅了する
彼は風に揺れる草のようでした

あの人は風
空に手を振り翳しても 決して捕まえる事の出来ない風
何処までも何処までも自由に吹いてゆくから
誰もが憧れる
風は草に安らぎを求める
大地に根付き 己の存在を主張する
安定して 力強いその姿。
自由に吹き 世界を駆け抜け 戻る場所には いつもある
その存在
変わらないまま 限られたその場所で
精一杯生を生きる
還る存在である草に 風は憧れる

互いに魅かれながら 互いが互いである事を願わない
風は風のままで
草は草のままで
沿いながら 互いの生を生きる

まるでそれは風のようでした

まるでそれは草のようでした

2011.03.20