(SE・ガヤ ちょっと小さく人のざわめき 部屋の中、窓の向こうはテラスになっており、そこから国中から集まった人間の姿が見える。)
ユート侍女 「ルーカ・ナイエ様。いらっしゃいました」
ルーカ 「(FI)ぎゃー何!?この格好!びらびらした服は大っ嫌いなんだってばー!絶対に税金の無駄!何処連れてく!放せー!何で侍女さん3人がかりで引っ張るんだー!」
(SE・足音 侍女に連れられて、ルーカが王の前に近づいていく)
ルーカ 「・・・おはようございます」
ユート王 「おはようございます。御子様。ふむ・・こんなところか」
ルーカ 「(小声で)それは、朝も早よから白いドレスで勝手に着飾られた私のことかぁ!?私のことかぁぁ!?」
占術師 「おはようございます。ようこそいらっしゃいました。ここは特別な行事、式典のある際、王が国民に直接お顔をお見せになるテラスのある部屋でございます。今日突然のことで驚かれるかと思いますが、これからルーカ様に国民の前に立っていただきます」
ルーカ 「・・まさか(王の意図を察したように)」
ユート王 「神に護られし御子が我が国を守護していることを宣言していただきたい。国民にとって多大な勇気と影響を与え、他国に脅威を与えていただきます。そして同時に貴女に貴女の今いるお立場を再認識していただきたい。時はすでに動き出していることを」
占術師 「広場には、ルーカ様のお姿を一目拝見しようと、沢山の人間が集まっております」
(SE・窓開く音 占術師テラスに続く窓を開ける)
(SE・ガヤ 窓を開く前よりは大きく)
ルーカ 「ーーーーー 。行ってやろうじゃないの」
(SE・足音 ルーカの後ろからウイルド現れる)
ルーカ 「あれ?おはようございます。おーじ様」
ウイルド 「お前の護衛で後ろからついて行くだけだ。気にするな。・・震えてるのか?」
ルーカ 「まぁ・・ふふふふふ(含み笑い)行きます」
(SE・足音 テラスに向かって歩き出すルーカ)
(SE・ガヤ 部屋の中よりも大きくFIしていく)
(以下、ルーカがテラスを去るまで微弱にエコーをかける)
ユート王 「長年にわたり、我が国ユートラフィアは隣国タスティーナと争いを続けてきた。未だ勝機は見い出せず、今、この瞬間にも大切な我らの同胞は戦い続けている」
(SE・ガヤ 士気の高まり「おおおおおおー」音量小 )
ユート王 「しかし、ついに我々は、一条の光を見い出した。創造神ジヴァルはユートラフィアのために救いを与えてくださった。彼(か)の御方に力に護られし御子が現れたのだ。御子はその大いなる力をお生まれし我が国のためにお貸ししていただけると言ってくださった。共に同胞として戦ってくださるということを誓約してくださった」
(SE・歓声 「おおおおおおー」音量中)
ユート王 「ルーカ・ナイエ様、どうぞお姿をお見せください!」
(SE・ガヤ 歓声「おおおおおー」音量大)
(SE・足音 ルーカ、テラスに出る)
ルーカ 「ただ今、ご紹介に預かりました、ルーカ・ナイエと申します。ーーーーー私に神の奇跡の力は扱えません」
(SE・ガヤ 人のざわめき「うっそー信じらんない。まじー」のどよめき)
ルーカ 「勿論誰かに与えることも出来ません。私は皆さんと同じ、ただ一人の人間です」
(SE・ガヤ 人のざわめき「何だよこいつー。何のために出てきたんだ」のどよめき)
ルーカ 「神の御力に護られし御子と呼ばれていましたが、皆さんと何も変わらない。同じです。けれど失望することはありません。神は全ての人を愛しています。全ての人を平等に護られています。奇跡を起こす力は、皆さん一人一人が持っています。特別に愛されている人間なんていません。神は皆さんを見ています。神に護られし人間を信じるより、神の愛を信じ、生きてください。神は本当に必要な時、あなたに救いを与えてくださいます。あなた自身のために生きてください」
(SE・足音 ルーカテラスから去る)
(SE・ガヤ 歓声 暫しの間の後、歓声が上がる。音量最大→FO)
ユート王 「ただの娘だと思っていたが・・・やってくれたな」
ルーカ 「何のことです?(とぼけた感じで)」
ユート王 「・・・まあいい。あなたには明朝、フィージアへ行ってもらう」
占術師 「王!早すぎます!それはあんまりにも危険ではありませんか!」
ルーカ 「フィージア?」
占術師 「・・・タスティーナとのただ今戦場となっている場でございます」
ルーカ 「前線へ・・・」
ユート王 「神の御力は、御子ご自身がその場に行かなければ働かないのかもしれん。御子が危険な事態に遭遇しなければ働かないのかもしれん。それに、その方がより大きな力を与えてくださるかもしれない。異論はあるか?ウイルド」
ウイルド 「いえ。王の命じるままに。明日前戦へ戻ります」
ルーカ 「・・ちょっと待ってください。行くのは私です。私に聞いてください」
ユート王 「残念ながら、貴女に選択権はございません。貴女はただ私の指示に従ってくだされば、それでいいのです」
ルーカ 「私は今さらどうこうできません。何も出来ないことは王がすでにお分かりのはず。私が言ってるのはせめて筋を通してほしいと言ってるんです!」
ユート王 「貴女は大変な勘違いをなさっている。私はこの国の王。本来ならあなたはこの国で暮らすただの娘だ。立場が違うのですよ。王である私に意見することがあってはならないのです。御子だということで崇められ、勘違いをなさってはおられませんか?・・・あなたの代わりなどいくらでもいるのですよ」
ルーカ 「勘違いしてるつもりはありません。私は最初からその何とかの御子じゃないって言ってるんですから。王。一ついいですか?」
ユート王 「・・何ですかな?」
ルーカ 「王は人に敬られてこそ王であり、自ら王と自負するものは傲慢なり。ばーい昔の偉い人」
ユート王 「何・・ですと?」
ウイルド 「お止めください!」
ユート王 「・・・何故、お前がこの娘を庇う」
ウイルド 「彼女を守れといったのは、あなた自身です。王。後ろで剣を抜き、構える兵たちをお収めください」
ユート王 「ーーーーー私の命令は変わらない。あなたにはどんなことをしても行っていただきます」
ルーカ 「行きますよ。でも王様のためじゃない。私自身のために。ーーーーー失礼します」
(SE・足音 ルーカ去る)
ウイルド 「私も失礼します」