ルーカ 「一体何がなんだかもう!どーして偉い人ってのは自己完結するのが好きなんだ!・・・反抗したらこんな部屋だし。閉じ込められるし。王様がそんなに偉いのかー!・・・偉いのか?」
ウイルド 「馬鹿かお前は」
ルーカ 「はっ。何ですか?おーじ様★」
ウイルド 「嫌そうな顔で可愛らしく喋るな。仕方ないだろう。お前を護るように言われて戻ってきたんだ。側にいないでどうする」
ルーカ 「・・・・・」
ウイルド 「不服そうだな。・・・来いよ。城ん中案内してやる」
ルーカ 「え?・・勝手に出歩いちゃいけないんじゃないですか?ドアは鍵閉めて、トイレ行くにも一回一回許可もらって・・・」
ウイルド 「行く気が無いならずっとここにいていいんだぞ」
ルーカ 「行きます。行きます。気分転換しなきゃもうやってらんない」
(SE・足音[2人] 廊下を歩く、ルーカ、ウイルド)
ルーカ 「はぁ・・こんなことがなきゃ一生お城なんかに入れることなんて無かったんだろうなー。すごいな。廊下に並ぶ装飾品。はー。あの甲冑いくらするんだろ。あ、あれも年代物」
ウイルド 「・・・。悪かったな」
ルーカ 「え?何の事ですか?」
ウイルド 「・・・敵視してたこと。あと・・・突然こんな事に巻き込んで」
ルーカ 「あはははは。気にしてたんですか」
ウイルド 「何笑ってるんだ!」
(SE・足音停止)
ルーカ 「えーと。・・頑固で恐い人だと思ってたんで。真面目な人だったんだなと思って。えへへへ」
ウイルド 「当たり前だろ。王の行動にしても。まさか強制的に連れて来られているとは思わなかった」
ルーカ 「・・・いえ。まさかこちらも家族がお金をもらってるとは思ってなかったし・・・」
ウイルド 「本当にすまない。誤解して欲しくないのだが、これはお前のことも考えた結果でもあるんだ。部屋も本来なら客室に案内するところなのだが、使用 人の部屋をあてがったのは、これから他国にお前の情報が流れ出したら、何らかの形で必ず狙われるようになるだろう。それから 目をくらまし、守るために、しいてはお前の安全のために王が配慮した事なんだ」
ルーカ 「・・・」
ウイルド 「信じられないと言う目だな。国を運営していく上で、王は時に非情な手段を取らなくてはならない時もある。けれどそれは国民 を想ってゆえの事なんだ。信じられないかもしれないが、そういうことなのだと覚えていて欲しい」
ルーカ 「・・国民全員のために一人が犠牲になる」
ウイルド 「・・・」
ルーカ 「なーんちゃってね」
(SE・足音 二人再び歩き始める。五、六歩でCO)
(SE・ドアの開閉音 一枚のドアの前に立ち、開けると、二人、中に入る)
ルーカ 「・・・肖像画。男?女?背中から栄えてる二枚の羽と、全身を包み込むような光・・・聖神ジヴァル?よく見るとここは祭壇?」
ウイルド 「・・神を見たことがあるか?」
ルーカ 「ない。言ってるじゃないですか。私が神の何だかって言うのか知りませんけど、私自身、生まれてこの方、一度も奇跡と言えるようなすんばらしい出来事なんかに会った事なんて無いんですから。大体自覚しててもしてなくても、その力の内容がよく分かりませんけ ど、そんな素晴らしい力持ってたら、もっと私楽な生活してると思いません?母親と兄弟と飲んだくれの父親のために、学校にも行かないで毎日せっせこ本屋で働いたりなんかしないと思うんですけど」
ウイルド 「・・・なるほど。・・神はいると思うか?」
ルーカ 「うーん。どうでしょう。こうやって祭壇もあるし。ある程度勝手に話をでっちあげられてる可能性があるし、何処まで信頼できるかは謎ですけど、ちゃんとした伝説も残ってるし。私的にはいたほうが夢があっていいんじゃないかって思いますけど」
ウイルド 「人々は信仰することで正義を持ち、自らを律する事ができる。神の存在はその為の手段の一つではないか。そして起こる予測不可能な自然現象を神の奇跡と呼んでいるだけではないのか。オレはずっとそう考えてる。だから人間は自分に都合のいい神ばかり創る」
ルーカ 「確かに・・・」
ウイルド 「森で暮らしていたら、森の神を。戦には戦の神を」
ルーカ 「そこら辺はまだ格好良いけど、・・竈(かまど)の神様とか、お酒の神様とかよく分かんないものまでいますからねぇ・・・」
ウイルド 「聖神ジヴァルは創造神であり、大地の神だ。お前はその神に護られ、軌跡の力を与えられるという」
ルーカ 「だからそれは」
ウイルド 「戦とは、結局は全てを破壊する行為。自ら生み出した大地、文明、技術、森、人間・・それらを壊すために神は力を貸すんだろうか」
ルーカ 「さぁ。神様に聞いてみなきゃ、そんなこと分かんないんじゃないんですか?実際この世界をそんなに大切に思ってないかもしれませんよ。人間同士の争いだって大した事じゃないのかも」
ウイルド 「そうだな・・・。それでも国は今、神の力を必要としているんだ。タスティーナとの戦いで兵は疲れを見せ始めている。何か発破材が必要なんだ」
ルーカ 「ユートラフィアとタスティーナはもう何年も戦争をしている・・・どうしてでしたっけ?」
ウイルド 「本気で言っているのか?」
ルーカ 「う。・・私の故郷は戦地からも、城下町からも離れたど田舎だから伝わりにくいんです。もうずっと長い間だし。それに自国の事だったとしても私たちに何も影響無かったですから」
ウイルド 「自分の国の人間が自分の生活を守る為に、今も命をかけて戦ってるんだぞ!それを影響が無いから知らないだと!?何も感じないのか!?」
ルーカ 「・・人が傷つくの、死ぬのが辛いわけないじゃないですか。でも現実には私たちの生活には何の影響もなかったから。・・気にならなかったんです。別世界のことみたいな気がして。別にこの国が嫌いなわけじゃないですよ。はっきり言えば、どの国に属してたっていいんです。戦争に勝ったって負けたって、何処で戦争してたって、今の生活が変わらなければ。冷たい言い方だって思うかもしれないけど、皆毎日自分の生活を支えるだけで精一杯なんですから。逆に聞いてもいいですか?どうして戦争なんかするんですか?汗水流して耕しや畑を一瞬にして踏み荒らされて戦場にされた人間の気持ちが分かっているんですか?」
ユート兵1 「ウイルド様!はっ!(ルーカに気付き、驚いたように)ルーカ様!勝手に連れ出されては困ります!何かあったら・・・」
ウイルド 「(兵1の言葉を遮る様に)オレがついてるからいいだろ」
ユート兵1 「しかし・・・」
ウイルド 「ーーーーーー」
ユート兵1 「失礼しました」
(SE・足音FO 兵士、その場から立ち去る)
ルーカ 「・・良かったんですか?」
ウイルド 「ーーーーーお前は、一時の自分の生活を守るために、心を捨てるのか?」
ルーカ 「え?」
ウイルド 「人は、己の想いを守るために戦う。己のプライドを守るために。自己の価値を守るために。しかし、思想とは、誰もが同じものを持つとは限らない。時に相反するものさえある。衝突して、戦争はそこから生まれるものだ。自然の摂理だとオレは思っている」
ルーカ 「はぁ・・・」
ウイルド 「少し難しかったなーーーーお前、名前は?」
ルーカ 「はぁ?・・ルーカ・ナイエ・・・ですけど」
ウイルド 「ルーカか。ルーカ、敬語はいい。使うな。オレも御子として扱ってないからな。オレのこともウイルドと呼べ」
ルーカ 「おーじさま?」
ウイルド 「ウイルドでいい」
ルーカ 「・・はあ」
ウイルド 「王の命令もあるし。仕方ないからお前のこと守ってやるよ」
ルーカ 「へ?」