天空の羽 地上の祈りとともに10

(SE・風の音)
ルーカ   「あはは・・やっぱちょっと怖いかも・・」
(SE・戦場の音)
ルーカ   「・・はぁ・・。どうしてこんなことになったんだろ・・。つい何日か前までは、飲んだくれの親父と家族を養うために本屋で働いてたはずなんだけどなぁ・・。まぁ、始まったことは気にしない。いい男紹介してもらうってウイルドと約束したんだし。ウイルドなら・・きっと何とかしてくれる。(大きく息を吸って)やりますか!」

ティアト  「だぁぁぁぁ!やあっ!」
(SE・剣の交わる音 戦場で戦うティアト。次々と剣を交えていく)
タス男1  「やぁぁ!たぁ!」
(SE・ガヤ 兵士が周囲に突然上がった火にざわめく)
ティアト  「・・どうした?何を騒いで・・・?」
(SE・火が燃えている音FI)
ティアト  「何!?何処から火が!?この辺りは土だけで、燃える物など何も無いはず!一体!?」
シスタ   「大丈夫か!?」
フィ男1  「シスタさん。私はまだ戦えます、それよりこの火は何処から!?敗北を覚悟し、タスティーナがまさか火を放って・・・!?」
シスタ   「それは無い!タスティーナにそんな物資はもう底を尽いているはずだ!大体上がった火は何処も、被害の出ない、何も無い場所ばかり。何の意図があってこんなことをすると言うのだ」
フィ男1  「だったら、この火は一体・・・」
ティアト  「・・崖の上に誰かいるぞ・・」

(SE・風の音 強風)
(SE・足音 崖の上でルーカが、二、三歩前進し、戦場を見下ろす)
(ここからエコー終了まで、ルーカの言葉全てにエコーをかける)
ルーカ   「ーーーーー神は泣いておられます」

ティアト  「・・あれは・・キャンプにいた・・」
フィ男1  「ウイルド様の侍女・・・?」
シスタ   「・・ルーカ・ナイエ様・・・」

ルーカ   「突然燃え上がった炎は、神の怒り、そして悲しみです。ご自身が創造されたものが、自ら壊れていくのを嘆いておられます」

タス男1  「お前は何者だっ!?」

ルーカ   「・・私は・・私は、ルーカ・ナイエ。創造神ジヴァルに護られし御子です」

ティアト  「創造神ジヴァル・・?まさか・・」

ルーカ   「私は先程までタスティーナに捕らえられておりました。しかし、タスティーナ王と話し合い、この争いを収める為に、私を開放してくださいました。平和のためにどうか戦うことを止めてください。両国の者とも剣を収めてください。神は人間が争うのをお望 みではありません」

フィ女3  「・・信じられない。私はこの戦で家族を失った。タスティーナのせいで。その怒りや憎しみは何処へ行けばいい!お前に何が分かる!本当に創造神に護られているというのなら何かして見せろ!」
フィ男2  「そうだ!お前はユートラフィアを勝利へ導くんじゃなかったのか!?タスティーナ側につきやがったな!裏切り者!」
(SE・ガヤ 次々に兵士がルーカを罵る)

ルーカ  「ーーーーー貴方方が望むのは何ですか?」
(SE・ガヤ 罵りが止まる)
ルーカ   「平和ではないのですか?自国の平和だけが望みなのですか?自分が幸せであれば、他人が苦しんでいても悲しんでいても構わないのですか?貴方方が人を一人殺す度に悲しむものが増えるのです。家族、友人、沢山のその人に関わった者たちが悲しむのです。それを貴方方は背負えるのですか?貴方方の心に描く幸せとは何ですか?」
(SE・火が燃え上がる音 新たな場所から火が上がる)
ルーカ   「神は苦しんでおられます。新たに燃え上がる炎は神の涙、痛み」
(SE・ガヤ 「まさか」「本当に?」等、ルーカが御子であることを疑い始める)
ルーカ   「ユートラフィア王子も私を護ってくださるために、側にいらっしゃいましたが、今、ご自身の城に、王に戦を止めることを進言するために向かっています。ーーーー私たちは同じ人間です。考え方や風習、習慣が異なっても、分かり合えるはずです。同じ大地に、同じ種族として生まれたのだから」
(ここでルーカのセリフにエコーをかけるの停止)
(SE・打撃音 ルーカ後ろから殴られる)
フィ男3  「何が神の力を持った御子だ。火が上がったのは油を撒いたからじゃねーか!この偽者が!」
ルーカ   「あたたたた・・・。後ろから殴られてばっか・・・。偽者じゃないよ。一応本物。これでも。何もできないけど。戦争を止めるためだったらどんなことでもしてみせるよ」
フィ男3  「いー根性してるじゃねーか。勝機は見えてるんだ。神の御子だか何だか知らねーけど、今更邪魔される気はねーんだよ」
ルーカ   「ユートラフィアの人間・・・。あなたは王様に利用されてることに気がつかないの?君は何のために戦ってるの?」
フィ男3  「いいんだよ。オレは。殺しができれば。戦争で敵を倒すなんて、いい大義名分じゃねーか」
タス兵3  「(遠くから)あの女を捕まえろ!人質にすれば形勢が逆転するぞ!」
フィ男3  「ちっ・・・。そうか(閃いたように)」
(SE・武器を握りなおす音 フィ男3が手の中にある斧をもてあそび、ルーカに向き直ると、握り直す)
フィ男3  「このまま敵国に捕まり、人質にされ、戦っている国民に迷惑をかけるぐらいなら、味方の人間の手にかかって今この場で死んだ方がいい。・・・どうだ。御子様が死ぬにはいい理由だろう」

(SE・ガヤ 「どうしたんだ?」「まさか偽者?」とざわめく兵たち)
シスタ   「・・・あの男は。斧を振りかざしている!?まずい!ルーカ様が危険だ!近くにいる兵士たち!ルーカ様をお守りしろ!」
(SE・足音[複数] 兵たちが一斉に慌ててルーカのいる崖に向かって走り始める)
ティアト  「城の人間が一斉に崖に向かって集まっていく。どういうことだ?あの娘が本当に・・・?」
タス男1  「ユートラフィアの兵士たちがあの女のところに向かっていく?こちらの兵士まで・・。残るのは俺たちと同じ戦いに慣れていない一般人ばかり・・・。今がチャンスだ!攻め返せ!まだ勝機はあるぞ!」
(SE・ガヤ タスティーナの人間が気合を入れなおす。「おう」「今なら勝てる」等)
フィ男1  「またタスティーナが攻め返してきました!」
ティアト  「持ちこたえろ!」
(SE・戦場の音)