(SE・街のざわめき)
街女1 「あ、ルーカ。今日は野菜買ってかないの?」
街男1 「いい魚、手に入ったぜ。一匹どうだい?」
ルーカ 「ごめーん。もうお金なーい」
街男2 「親父さんに今日もいい飲みっぷり見せてくれって言っといてくれよ」
ルーカ 「やーだよ。父さんが君の酒場で毎晩飲むからお金ないんだぞ」
街男2 「それならルーカが家で働けばいい。人気出るぞ」
街男3 「ルーカ、酒場で働くのか!?通っちゃうぞ、俺」
街女2 「ルーカがいるなら私も行きたいねぇ」
ルーカ 「もー何言ってんの。働きませんってば。第一働いてる目の前で父親が金使う姿見てどうすんの?意味ないじゃない」
街男2 「んじゃあ親父さんを監視する事も兼ねてって事で」
ルーカ 「今の本屋のお仕事で手一杯です」
(SE・馬車の走る音FI)
街女2 「あれ。あんなきらきらした馬車、お城の馬車だよねぇ。どうしたんだろ。こんな田舎町まで」
ルーカ 「さあ」
(SE・馬車の停止)
街男3 「ルーカの前で止まった」
(SE・ドアの開く音)
(SE・馬車から降りる足音 城男、馬車から降り、ルーカの前に立つ)
城男1 「ルーカ・ナイエ様ですね」
ルーカ 「はい。・・・?」
城男1 「ユートラフィア城までお来し願えますか?」
タイトル 「天空の羽 地上の祈りとともに」
(SE・扉の開く音FI。謁見の間の扉が開く)
ユート兵1 「王。ルーカ・ナイエ様お連れ致しました」
ユート王 「・・・お通ししろ」
(SE・大広間足音FI)
ルーカ 「・・お初にお目にかかります。ルーカ・ナイエと申します。お招きいただきありがとうございます。広大な豊穣の大地と清浄なる光の元に私たちを御護りくださる、天空の神の御名を抱きし、我が国の王セイル・カル・ユートラフィア様」
ユート王 「・・・あなたが・・・。いや。随分とお若い。・・・それよりもお召し物をご用意させたはずですが」
ルーカ 「・・あ。王の御前で失礼かとも思いましたが、私には身分不相応で、自分の持つ服で十分でしたのでお断りさせていただきました」
ユート王 「そうですか。・・・よくいらっしゃいました」
ルーカ 「あの。それでどうして私を・・・?」
ユート王 「その貴女の内に秘めたる御力をお貸し願いたくお呼びしたのです。我々・・いやこの国の平和の為に」
ルーカ 「・・力?平和?」
(SE・足音FI 占術師現れる)
占術師 「・・・王。突然仰られましてもルーカ様にはご理解いただけないものと。おそらく、ご自身でもお気づきになられないまま無意識に御力をお使いになっていらっしゃるのではないかと」
ユート王 「・・・そうか。そういうものか」
占術師 「失礼致しました。私(わたくし)、占術師マスティアと申します。占術師とは未来を予見する特殊な能力を持ち、その能力もって人々を導く人間のことを言います。私の一族は祖母の代から、代々この城の王に仕え、国の未来を予見してまいりました。」
ルーカ 「・・・はい」
占術師 「突然ですが、聖神ジヴァルをご存知でしょうか?」
ルーカ 「この世界を創ったと言われる神様・・?」
占術師 「聖神ジヴァルは創造神ジヴァルとも呼ばれ、人の姿を持ち、その体に纏う清らかな光から世界は生まれ、その背中から生えた大きな純白の羽に包に包み込み、聖神は我々世界に生きるものを見守っています。そして時に〝奇跡〟という事象を持って我々に救いを与えてくれます。豊かな実りを与える光に、雨に、病気の者傷を負った者に癒しの風に」
ルーカ 「〝奇跡〟?」
占術師 「神は万人を愛し、万民を平等に慈しみ、誰か一人にその御力を授け、無限の〝奇跡〟を与える事は無いと信じられてきました。しかし・・・つい先日、〝奇跡〟の力を授けられ、望むままに扱える、神に選ばれし御方がおられると予見に現れたのです」
ユート王 「何故今までその人物が予見に現われる事が無かったのか。それもまた神のご意志なのかは我々には計り知れないが。我が国がもう何年も隣国タスティーナ王国と戦争を続けている事はご承知の事と思います。しかしその戦局は昨年から停滞し続け、打開策も無く膠着状態が続いています」
ウイルド 「先の方針を考えるために予見したところ、〝神に護られし一人の御子〟つまり一人の娘の姿が見えた。〝その御子平和を導くであろう〟とな」
(SE・足音FI 王の台詞の途中から)
ユート王 「ウイルド。帰っていたのか」
ウイルド 「王がお呼びになるから、その膠着状態の戦場から戻ってまいりました」
ルーカ 「・・・・」
ウイルド 「・・・俺と同じ位の年か。けれど神の力を自在に操れるらしいな」
ユート王 「ウイルド。何という口の聞き方だ。申し訳ありません。彼は私の息子ウイルドと言います。貴女をお守りする為戦場から呼んだのです」
ルーカ 「・・・お目にかかれて光栄です。風の精霊の称号を御名に抱くウイルド王子」
ウイルド 「何故来たんだ?本当に奇跡なんて起こせるのか?自分を勘違いしてるんじゃないのか?大体奇跡って何だ?国をかけた重要な戦争を神なんて偶像の産物に任せるなんて間違ってるんだよ。マスティアもどうかしてるんじゃないのか?こんな娘に何ができるっていうんだ」
ルーカ 「・・・・・いい加減にしてほしいんですけど。突然、王の命令だって半強制的、脅迫的に城に連れて来られた私の気持ちも考えて少しは喋ってよ!両親に何も言う暇さえなく連れてこられたんだから!」
占術師 「ご家族の方にはご連絡とささやかでありますが御礼をしておきました」
ルーカ 「・・・・・。(小声で)売りやがったな」
占術師 「は?」
ルーカ 「大体失礼ですけど、あと本当はこの王子様の意見に賛成するのはすっごく嫌なんですけど、その占い間違ってるんじゃないんですか!?今までは当たってきたのかも知れませんけど!私生まれてこの方一度もそんな奇跡的な現象にお会いした事なんてないんですから!だったらもっと面白おかしく楽して生きてたっていいはずじゃないですか!そしてぇっ!」
(SE・びしー!って指差す感じ。一気に言えるならなくてもよろし)
ルーカ 「勝手に決め付けて敬語使ったり、丁重に扱うの止めてください!王様!マスティアさん!自分の国の王様に敬語使われるなんて気分悪すぎ!しょっぱなから敵視するの止めてください!王子様!私だって訳分かんないままここにいるんだから!」
王・マ・ウ 「・・・・・」
ルーカ 「・・・はぁ・・・・はぁ・・。(呼吸を整える)帰ります」
(SE・足音 ルーカ去ろうとする)
ルーカ 「・・・・兵士のお兄さん。入り口の前で邪魔しないでいただけますか?通れないんですけど」
ユート王 「御子様は長旅で大変疲れていらっしゃるようだ。お部屋にご案内しろ」
ルーカ 「ちょっ・・。何この人たち!腕放してよ!」
(SE・腕をつかむ音 兵士がルーカの腕をつかむ)
ユート王 「連れて行け。丁重にな」
ルーカ 「ちょっ・・!」
(SE・足音FO ルーカ部屋から強制的に退出させられる)
ルーカ 「ちょっとまてぇぇぇぇっ!」(エコーをかけ、謁見の間から出ても、廊下から声が反響してくる感じで)