「セイは最近沖田先生とよく会っているんだな」
「え?そんな事無いよ!」
祐馬に久し振りに甘味屋に誘われ、うきうきしながら団子を頬張り、セイは答える。
「父上が最近毎日のように沖田先生が家に来ると言っていたが、本当なのか?」
「そうなの!いつもお土産持ってきてくださって!美味しいのっ!自分が食べてみたかったけど一人で食べても味気無いから一緒に食べる人が欲しいんだって!」
「…それだけか?」
「それだけだよ」
祐馬が恐る恐る尋ねると、セイはきょとんとしてそれだけを答え、そして何を思い出したのか今度は突然頬を膨らませた。
「私は『甘味スキスキ仲間』なんですって!それに壬生寺で子どもたちと一緒に遊ぶ仲間!沖田先生からしてみればただの子どもですよ!子ども!ちゃんともう嫁にも行ける年頃の娘に向かって!」
「……セイは嫁に行きたいのか?」
「嫌!お嫁なんかには行かない!私は兄上がいてくれればそれでいいの!沖田先生もお嫁さんなんかいらないって言ってるの!私も旦那様なんかいらないでもいいと思わないっ!?私は医師になって自立するんです!」
「…そうか…」
それは総司に対する当て付けなのか、それとも参考にしているだけなのか、とは問わない、祐馬。
「今日だって酷いんだよ!本当はこのお店に一緒に来る予定だったのに連絡も無しにすっぽかされてるの!」
「今日…?ああ、近藤局長がお出かけの際に供を頼まれたと嬉しそうに出掛けられていた」
祐馬は総司の下、一番隊隊士に所属をしているから、そう伍長に伝えられていたのを思い出した。
「ほらぁ!きっと私との約束なんか忘れて今頃楽しく近藤先生のお供をしてるんだよ!」
剥れるセイに祐馬は提案する。
「だったらそんな薄情な人ともう会わなきゃいいじゃないか」
「え。やだ!」
「やだって…」
「女子としては全然見てないくせに時々すっごく優しいんだよ。何かあったら兄上に申し訳立たないからって言うけど…。~~無意識にすっごくタラシだし!可愛いとか綺麗だとか言いまくるんだよ!しかもほっぺ柔らかいとか言ってぷにぷに触ってくるし!でもあんな事出来るって事は全然私の事女子として眼中に無いって言ってるも同じでしょ!悔しいっ!」
「年頃の娘の頬に勝手に触るのか…沖田先生は…」
祐馬の声の調子が下がった事に気が付いたセイは慌てて取り繕う。
「あ!だからそう言うんじゃないよ!本当に子どもにするのと一緒で!」
「子ども扱いだとしても、もうさせるんじゃないぞ」
「はい」
しゅんと落ち込むセイに、祐馬は苦笑する。
「沖田先生にすっぽかされたなら、斎藤さんと三人で吞みに行くか。こっちは三人で楽しもう」
「え!斎藤兄上と一緒にっ!」
「嫌か?」
「嬉しい!斎藤兄上って兄上とすっごく雰囲気が似ててもう一人兄上が出来たみたいで嬉しいんだよね!」
「そうか」
「父上に言ってくるね!」
そう言うと、セイは家まで駆け出した。
「沖田先生より、兄のようにしか見られてない斎藤さんの方がまだ安全な気がするからな」
祐馬は満足そうに笑った。
「それでもまだセイの一番は俺で安心した」