私があの日、あなたと共にあったこと忘れません。
あなたと確かにひとつになったことを。
一生私のこころの中から消える事は無いでしょう。
触れること。見ること。感じること。
それは全てただの交わるための方法であって。
過程であって。
こころがひとつになるということの真実。
そのことで生まれる真理。
私の中で何物にも換え難い宝物を手に入れました。

私は忘れないでしょう。
あなたと別れたあの刻を。
頬を伝う冷たい涙を。
躰を伝う痛みを。
喜びを。
こころの軋みを。

私は生きる。
自由に。
雲のように。風のように。
どこまでも自由で。どこまでも広い。澄み切ったこの空の下で。
生きているから。
この大地をどこまでもふたつの足で歩んでいくことでしょう。

ただ。
時々。
この虚しさを。この痛みを。
どうかほんの少しの間でいいの。
涙に変えて。
想い出させて下さい。
あなたを。

確かに私はあの時あなたと共にいたことを。
この涙が何であるのかを。

 

「雲のように 風のように」or「後宮小説」より

2003.05.20